診療のご内容MEDICAL

顔面神経麻痺

耳の疾患と治療

面神経麻痺とは

顔面神経麻痺は、顔の筋肉を動かす顔面神経(脳神経の一つ)に麻痺が生じる病気です。
中枢性と末梢性とに分けられます。末梢性の顔面神経麻痺であることが多く、耳鼻咽喉科が診断と治療を行います。

顔面神経麻痺の原因

顔面神経は、脳から出た後に側頭骨という骨の中を通り、耳下腺という耳の下にある唾液腺の中を通って目や鼻や口に向かって神経が伸びています。
末梢性の顔面神経麻痺は、その途中でヘルペスウイルスが再活性化して発症することが多いとされています。ヘルペスウイルスの再活性化は、疲れ・栄養失調など免疫が低下して体に何らかのストレスがかかった後に出現すると言われています。まれに耳下腺に腫瘍があり、神経に悪さをして麻痺を起こすこともあります。
中枢性の顔面神経麻痺は、脳出血、脳梗塞、脳腫瘍などが原因で起こることがあり、その可能性があれば神経内科・脳神経外科へ紹介させて頂きます

顔面神経麻痺の主な原因

ヘルペスウイルス感染

最も多くみられるのが、「ベル麻痺」、「ハント症候群」と呼ばれるヘルペスウイルスの一種である単純ヘルペスウイルス、帯状疱疹ウイルスが顔面神経で再活性化することが原因といわれています。その後、炎症により神経が腫れますが、側頭骨という硬い骨の中で腫れるため締め付けられる形となり、神経の周りの血流が悪くなります。このため徐々に神経の変性が進み、悪化してきます。

外傷や外科手術の合併症

交通事故や転倒などで頭や耳を強くぶつけた時に、骨折が顔面神経の通っている骨にまで及ぶと顔面神経麻痺が起こります。程度により早期に手術が必要になることがあります。聴神経腫瘍などの脳腫瘍摘出のための手術、中耳真珠腫などの腫瘍摘出のための手術、耳下腺腫瘍・癌などの摘出のための手術などで顔面神経を損傷した場合には、術後に顔面神経麻痺が起こります。

中枢性疾患や耳下腺腫瘍

脳出血、脳梗塞、脳腫瘍で突然顔面神経麻痺を起こすことがありますが、多くは上手にしゃべれなくなったり、手足の麻痺やしびれ、頭痛、意識障害などの症状が一緒に出ることがあります。また、耳下腺の悪性腫瘍や難聴なども伴う聴神経腫瘍によって麻痺がおこる可能性もあります。早期の診断、治療が必要です。

顔面神経麻痺の症状と診断

顔面神経麻痺の症状

顔面神経麻痺の程度にもよりますが、よくみられる症状は、「顔がいがんでいる」、「眼が閉じにくい」、「水や食事が口からこぼれる」などです。
また、顔面神経は色々な枝をだして広がっていきます。例えば味覚を伝える神経、涙や唾液の分泌を調節する神経、大きな音から耳を守るために鼓膜に反射を起こす神経などがあります。これらの枝の部分で障害が起こると、顔の麻痺以外に、味覚障害、涙や唾液が出にくい、音が響くなどの様々な症状が伴います。

診断方法

顔面神経麻痺の程度を評価するために、額のしわ寄せ、眼を閉じる、口を膨らませるなどの顔の動きを観察します。
正常な方と比べ、どの程度麻痺しているかを点数で表す顔面神経スコアを付けて評価することが一般的です。
その他、聴力検査や耳小骨筋反射などを行います。難治性の麻痺や重度の麻痺に対しては筋電図検査を行い、神経の障害の程度を調べることもあります。

顔面神経麻痺の治療とリハビリ

顔面神経麻痺の治療

薬物治療として一般的にはステロイド(副腎皮質ホルモン)投与になります。ヘルペスウイルスの再活性化が疑われる場合は抗ウイルス薬を一緒に投与します。
ステロイドは炎症や浮腫を抑える効果を持つ薬ですが、発症して約2週以上経過すると神経の回復には寄与しないと言われており、できるだけ早期にステロイドの治療を行うことが重要です。抗ウイルス薬はウイルスの増殖を抑えてくれますが、増えたウイルスを殺すことはできないとされていますので、症状に合わせて投与します。重度の麻痺の方やステロイドの合併症が懸念される方(高齢、糖尿病、高血圧など)は入院での投与が望ましいため、連携病院をご紹介します。
重度の麻痺の方、筋電図検査で神経損傷が強い場合は、顔面神経減荷術という手術を行うこともあります。

リハビリ

薬物治療に加えて、顔のリハビリテーションやマッサージも有効です。全体の15~20%程度で麻痺が起こってから約半年~1年経過した後も麻痺や後遺症が残るといわれています。主な後遺症としては顔のひきつれ、目を閉じたときに一緒に口が動いてしまう(病的共同運動)などがあります。顔面神経麻痺のリハビリは筋肉トレーニングではなく後遺症をできるだけ予防する目的ですので、あせらずにゆっくり行いましょう。マッサージのやり過ぎや低周波治療などの電気刺激はかえって顔のひきつれや病的共同運動を助長させてしまう可能性があるため、お勧めしていません。